MITOU MAGAZINE
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■1 IoT合宿#3を開催します
昨年より不定期で開催している「未踏IoT開発合宿」、第3回を6月2日~6月4日に開催します。
ソフトウェア技術者の多い未踏OBがハードウェア知識を習得して可能性を高めよう、という合宿です。
堅苦しくなく、とりあえずハードウェアに触ってみて、楽しく新しいことができるようになろう、という方向を趣旨にしています。
ハードウェア未経験者、経験者、ともに歓迎です。
この合宿の特長はやはり未踏OBが集まるという点で、過去の合宿ではすべての参加者に強力にブースト効果があったようです。
初心者はIoT開発ができるようになり、経験者は進行中のプロジェクトで直面している問題点を解決できたりしたようです。
「どんな問題もすぐに解決できる」との声をいただいています。
当日開発する内容は(IoTに限らず)自由です。
期間も2泊3日と長めですので、普段なかなか進められないプロジェクトを、他の未踏OBと一気に進めてみるのはいかがでしょう?
過去2回と同じく、合宿は未踏OB限定、非公開で行います。
はんだごてや置き部品も用意します。会場は東京、晴海グランドホテルです。
部分参加や日帰りも可能です(事前にご相談ください)。
詳しくは以下のイベントページをご参照ください。
参加申し込みも同ページから行えます。
http://eventregist.com/e/OtG55PXVKysh
多数のご参加をお待ちしております。よろしくお願いいたします。
■2 未踏ジュニアの募集を開始しました
【5/19締め切り】未踏ジュニア、応募受付を開始しました。
独創的なアイデア、卓越した技術を持つ17歳以下のクリエータに対し、各界で活躍するPMやその他専門家による指導、また最大50万円の開発資金や開発場所及び機材の援助を行います。
http://jr.mitou.org/
■3 Slush Tokyoに未踏卒業生たちが出展しました
3/29-30に、参加者が5000人を超える世界最大級のスタートアップイベント「Slush Tokyo 2017」が開催され、Mitou Foundation×Accentureブースでは未踏卒業生7組が展示を行いました。
2016年度未踏クリエータの藤坂祐史さん(Recoco)に現地での様子と感想を寄稿頂きました:
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会場内はスモークと提灯の明かりで、祭りの雰囲気。
ピッチや対談が各地で並行し、盛り上がりを見せていました。
ブースでは、2日間で120名以上にデモを行いました。
大手のメーカーや銀行、航空会社等、普段接していない層の方とも直接話せたことで、気付いていなかった価値を感じられたり、新たな展開の種を得られたりしました。
少し異なるコミュニティに踏み込む面白さと意義を感じられた2日間でした!
アクセンチュアによるレポートもご覧ください: https://www.accenture.com/jp-ja/blogs/blogs-slush-tokyo-2017-report
■4 未踏ジュニアキャンプを開催しました
「2017年度未踏ジュニアキャンプ」を2泊3日で開催しました。
独創的なアイデアを持つ小中高生クリエイターを応援するプロジェクトです。
[1日目]
今回の会場であるホテルコンチネンタル12:30に集合し、13:00よりオープニングプログラムを開始。
冒頭は荒川淳平理事の挨拶、鵜飼佑PMからキャンプの目的と概要が説明されました。
メンターとして参加する未踏ジュニアOB/OG、未踏OBの自己紹介、日通旅行による合宿に関する簡単なブリーフィング、キャンプ中の情報共有やFBなどに使うSlackの説明の後、今回参加した小中高生クリエイター全員のプレゼンが行われました。
彼ら・彼女らの発表内容に関しては未踏ブースト会議同様のNDAが結ばれ、会場外に持ち出さないルールのため、割愛します。
続いては、未踏ジュニアの先輩たちによるプレゼン。
トップバッターは石川高専3年生の福住仁志朗さん。
今回参加しているクリエイターの山口さん、村上さんとは同級生だという。
未踏ジュニアでは、鈴木PMについてもらい、「Voice Commander ~かっこいいチェス」を開発しました。
今回は作品の発表はWebでも見れるからと、未踏ジュニアのいいところを同じ立場の先輩として紹介しました。
福住さんが挙げたのは、「①最強のメンターと研究費」「②圧倒的な進捗管理」「③圧倒的な人脈と実績」。
同世代はもちろんのこと、未踏イベントを通じて普段はなかなか会えない著名開発者・研究者や経営者たちと会えることを魅力として挙げました。
未踏ジュニアプレゼンの二番手は、「スマートペン」を開発した工藤零大さん。
勉強時間を記録してさぼり癖をなくしたいという開発のきっかけや、スマートペンの特徴やデモ、技術的に工夫したところや、現在取り組んでいる電池の改善についてなどを紹介しました。
最後に先輩としてのアドバイスとして、やりたいことをやるよりも、「目的に必要なプロセス」をやること、利用者の立場に立って考えること、似た分野は積極的に調べて、学ぶこと、目的に合った成長を見せるプレゼンを行うことを挙げました。
三番手はVR絵本メーカーを開発した木村皓子さん。
慶應義塾女子高校をこの春に卒業し、4月からは大学生となった。
今回はVRで何かやりたいというふわっとした応募時から、鵜飼PMについてアイデアや作品をブラッシュアップしていった経緯を紹介しつつ、案や機能は徹底的に練ることや熱意の大事さ、PMのありがたさについてなどを木村節で語りました。
続いて未踏OBによるプレゼンが始まりました。
トップバッターは2011年度のIPA未踏IT人材発掘・育成事業スーパークリエータ、みゆっきこと山中勇成さん。
学生時代からストリーミングサーバーを構築し、生放送できるサイトを作るなど、そのプログラミングスキルを活かして、ドワンゴ・クックパッド・サイバーエージェントなどの会社で働いたことや、未踏に採択された配信ランキングプラットフォーム「ソムリエちゃん」の紹介などを行いました。
ここで2017年の未踏採択業務の合間を縫ってキャンプに訪れた、竹内郁夫未踏代表理事から、クリエイターたちに励ましのメッセージが贈られました。
未踏OBプレゼン二番手は、2006年未踏ユーススーパークリエイタの上田真史さん。
20年前からのインターネットの歴史とそれぞれの時代の中学・高校生のソフト販売の状況と変化について話をしました。
三番手は2007年未踏ソフトウェア創造事業に採択された後藤義雄さん。
現在はベネッセコーポレーションに勤めつつ、自身で起業したりもしています。
後藤さんは未踏人材が非IT企業に入ったらどうなるか、自身の経験から全方位でスキル習得ができるメリットなどを紹介。
さらに「みなさんが50歳になった時の世界を考えてみよう」と題したプレゼンを行いました。
17:30からは、未踏IT人材発掘・育成事業統括PM/一般社団法人未踏理事である夏野剛氏による講演が1時間かけて行われました。
講演タイトルは「ITが及ぼした社会構造変化と日本企業の展望」。
GDPや生産性などをわかりやすく説明しながら、20年前から一人あたりが作る価値は増えているのに、日本のGDPや生産性が増えていないことから語り出した夏野氏。
グローバルで比較すると、アメリカは129%、実質値で58%も成長している。
テクノロジーを使う目的は生活を豊かにすることだが、なぜ日本は経済成長しないのか。
その理由と背景を考えてほしいと訴えました。
さらにこの20年間、社会に対してテクノロジーはどんな変化を及ぼしてきたのか、21世紀に起きた3つのIT革命について解説。
第一の革命「効率革命」では、ビジネスのフロントラインがネットに展開したこと、オフィスのデジタルツールの浸透、第二の革命「検索革命」ではGoogleをはじめとする検索システムが個人の情報収集力を飛躍的に拡大したこと、それによって研究開発プロセスが格段に進化したこと、専門家を量産したこと、そして第三の革命「ソーシャル革命」では、個人の情報発信やSNSによる共振などを挙げました。
それら3つのIT革命がもたらしたものとして、組織と個人のパワーバランス、個人能力の最大化、多様性を歓迎する社会の変化についてコミカルに説明し、そしてこれから第四のIT革命をもたらすであろうテクノロジーとして、AIとIoTを挙げ、高齢化と少子化による人口減で縮小する国内市場や多様化する個人の趣味趣向にどう向かいあっていくか、日本が持つ三種の神器「カネ・人材・技術」を活用すべきかなどの持論を展開しました。
夏野氏は日本に残された道としてイノベーションを創りつづけること、グローバル市場に大規模進出するしかないと語り、そのためにはAIにはできない創造・想像というふたつの「そうぞう」を社会の中心価値に置き、リーダーの甘えを断つことだと断言。自分と違う意見や考えを持つ人に会ったらラッキーと思い、議論や摩擦を恐れず突き進むべきであること、チャンスはいくらでもあるからどんどんチャレンジしていってほしいと激励しました。
夏野氏の講演後は会場を移し、夕食をとりながらの交流会。
和洋中のメニューがバイキング形式で用意され、OBプレゼンの合間に好きな食べ物や飲み物を取りに行き、プレゼンを聴きながら食事をするというスタイルで行われました。
夕食会のOBプレゼンは、ハックフォープレイ代表取締役の寺本大輝さんからスタート。
寺本さんは、16歳でプログラミングと出会い、2014年7月にHackforPlayを開発、2015年度未踏スーパークリエータに認定されました。
全ての子供たちがプログラミングを学びたくなるきっかけをソフトウェアによって作り出すというミッションを掲げて活動しています。
2013年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業採択,同年度スーパークリエータ認定の鈴木遼さんは未踏ジュニアのPMも務めています。
プログラミングを楽しく簡単にする、インタラクションのためのプログラミングツール「Siv3D」でどんなことができるのかデモで紹介。
その手軽さにクリエイターたちの歓声が上がる。
最後に開発計画の立て方として、80%はすでに自分ができること、20%は新しく勉強すること、これを繰り返すことで自分もプロダクトも成長していくとアドバイスしました。
IPA未踏スーパークリエータであり子どものためのプログラミング道場「CoderDojo Japan」の代表理事および未踏ジュニアのPMも務める安川要平さんは、「CoderDojo Japan」を日本で立ち上げ、全国展開していった経緯や思いなどを語りました。
それらの経験からクリエイターたちには、未踏OBやPM/理事ら「巨人の肩に乗ろう」、キーマンには「熱意を伝えよう」、協力をしてくれた人には「感謝をあらわそう」という3つのアドバイスを贈りました。
2002年度スーパークリエータであり、未踏社団理事を務めるサイボウズ・ラボの西尾泰和さんは、「良いアイデアを出すための方法」と題したプレゼンを行いました。
90点以上のアイデアを出さなければいけない状況で、最初から良いアイデアを出そうとしても出るわけではない。
いくつものアイデアを出し、悪いものを捨てて良いものを残すことで最終的には良いアイデアになる。
質のバラツキが大きい方が最終的に質は高くなるとサイコロを使った確率論で説明しました。
ただし、良いアイデアであっても全部取り入れようとすると一つあたりの時間が減ってしまうと指摘。
良いアイデアを出すためには、質のバラツキを大きくすること、たくさん出すこと、全部やろうとせずに絞ることだとまとめました。
初日最後のOBプレゼンは、未踏ユースOBの中山心太さん。
今回の内容は参加者限定、資料非公開、撮影NGとのこと。
プレゼン終了後は、鈴木PMの「Siv3D」話で盛り上がったり、Microsoft HoloLensを体験したりと、交流会を楽しむ光景が続きました。
21:30で交流会は終了し、クリエイターたちはそれぞれの部屋に帰りましたが、メンターや理事たちは、翌日のディスカッションを行うグループ分けと担当者を決めるべく、深夜まで議論を重ねました。
[2日目]
2日目は各自朝食をとった後、9:00から東京大学産学協創推進本部 本郷テックガレージディレクター馬田隆明氏の招待講演。
馬田氏は日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャー、テクニカルエバンジェリストを経て、スタートアップの支援を行っています。
馬田氏が小中高生のクリエイターに伝えたのは、「逆説のスタートアップ思考」。
一見、反直感的であり、誰もやらなかったことにこそビジネスのチャンスがあるという思考法です。
スタートアップという起業スタイルで成功したGoogle・Facebook・Airbnbがなぜ成功したのか、それらの事例を新たなビジネスモデルは既存の考え方、常識にとらわれないことが大事であると説きました。
さらに今回は特にPayPalの創業者であり、シリコンバレーで大きな影響力を持つPeter Thiels氏の「賛成する人がほとんどいない大切な真実はなにか」、Y Combinatorを創立し、スタートアップ企業への投資を行っているPauk Graham氏の「Googleなどの世界でもトップ企業での高給や地位を捨てて、20番目に君の会社を選ぶ理由」「何よりの逆張りは、大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ」などの名言や成功事例を引用。
反直感的なビジネステーマ・モデルを選択することの有用さを解説しながら、それらに気づくためのコツやチャンスの掴み方、ビジネスを成功に導く要素、スピードの大事さなどを紹介し、アイデア出しのヒントにしてほしいと語りました。
講演後は質問にも応じ、小中高生のクリエイター全員に著書「逆説のスタートアップ思考」をプレゼントし、激励しました。
馬田氏の講演後は、以下のようにグループに分かれて、それぞれディスカッションを開始。
グループ分けは前日に行ったクリエイターたちのプレゼンをもとに、その進捗状況と内容からメンターたちが喧々諤々の議論を行い決定しました。
グループAは山口智也さん、菅野楓さんに、安川さん、西尾さんがメンターとして入り、二人がなぜこの内容でプロダクトを作りたいと思ったのか詳しくヒアリングし、内容を絞っていきました。
菅野さんが宮崎駿監督や東工大に直接話を聞いてきた行動をプレゼンに組み込み、軸を絞ったほうがよいのではないか、山口さんのVR・MRが大好きであるという想い・熱意をもとにゲーム以外に何か便利なツールが生み出せないかなどを議論。
いくつものアイデアが生まれました。
グループBは学習キットをテーマにした木下亮佑さん、二ノ方理仁さんと、中山さん・寺本さん・鵜飼さんがメンターとして入りました。
木下さんのプロジェクトに対しては、そもそものメリット・デメリット、意義・目的の整理から開始。
二ノ方さんのプロジェクトについては、想定ターゲットがどうしたらモチベーション高く学ぶことができるのかといったメンタル面や、手を動かして学ぶためにはどういうものがよいのかなどについて議論・アドバイスが行われました。
グループCは矢野礼伊さん、斎藤尊さんにIoT機器やプロダクトの事業化、ネットワークなどに詳しいメンター上田さん、久池井さん、山中さんがつき、アイデアのブラッシュアップからArduinoやRaspberryPiなどのIoT機器の基礎知識や活用法などを伝授。
モノづくりチームのデスクはハッカソンさながらの盛り上がりを見せていました。
グループDはコミュニケーションツールを題材とした水野優希さん、霜田哲之介さんに、関さん・福住さん・本多さんがメンターとして参加。ホワイトボードと付箋を駆使し、「自分がつくるもの」を明確にし、自身の作品の特徴を尖らせる議論が行われた。
関さんのするどい指摘が場の緊張感と思考力を高め、本多さんと優しい笑顔とイラスト、福住さんの先輩としてのアドバイスなどが意見を出しやすいなごやかさを作り出し、とてもよい議論の場となっていました。
グループEは村上大斗さん、成瀬陽太さんに、鈴木さんと川合さんがメンターにつき、アプリを楽しく見せるための技術としてSiv3Dを活用するなど、実装方法やアイデア、プレゼンに関するブラッシュアップを行いました。
昼食と1時間の休憩後は、OBプレゼンが行われました。
トップバッターは未踏2011年度コクリエイタ(西嶋プロジェクト)で、株式会社Gunosyの共同創業者である関喜史さん。
専門はウェブマイニング,機械学習応用,自然言語処理応用で、特に推薦システム、ユーザ行動分析を得意としています。
プレゼンタイトルは「サービスを作りたいみなさんが起業を目指すべきではない理由」とセンセーショナルなものだが、伝えたかったことは起業することの厳しさと成功を目指す強い意志と行動力の必要性について。
作りたいものを作ることと、成功するために作ることの違いや辛さをGunosyでニュースアプリを成功に導くまでの体験談をもとに熱く語りました。
続いては未踏社団理事でサイボウズ・ラボの川合秀実さんによる「夢をおいかけた話」。
かつて川合さんはWindowsを超えるOSを作りたいという夢を持っていました。
周囲からは「絶対無理」と言われていたが、あきらめることが嫌いな川合さんはチャレンジを続けた結果、OS開発プロジェクト「OSASK計画」が2002年度未踏ソフトウェア創造事業(ユース)に採択されました。
2006年には「30日でできる!OS自作入門」という著書も出版。
これまで作ってきたOSをコミカルに紹介し、会場を盛り上げました。
結果的にWindowsを超えるOSを作ることは実現できなかったが、それでも挑戦し続けて幸せだったという川合さん。
やらない理由やできない言い訳よりも後悔しないためにやろう、夢があるなら期限を設けながら追いかけるべきだとアドバイスを贈りました。
そして、2014年度未踏スーパークリエータであり、現在は富士通の総合デザインセンターで髪の毛で音を感じる新しいユーザーインタフェース「Ontenna」の開発にUIデザイナーとして取り組む本多達也さんが「グッドデザインってなんだ?」というテーマでプレゼン。
2016年度のグッドデザイン賞の中から本多さんが印象に残ったという作品を紹介しました。
グッドデザイン大賞を受賞した「世界地図図法」は、地球の全体像を示す四角い地図。
ずっと研究してきたことがデザインで評価されることに感動したという。
スマートフォンを使ってコントロールできるようになるIoT製品「MaBeee(マビー)」や東京都が配布した防災ブック「東京防災」、避難所用・紙の間仕切りシステムやハロウィン用のごみ袋なども紹介。
最後に、特別賞を受賞した自身のプロダクト「Ontenna」についても改めてその概要を紹介し、世界中のろう者に「Ontenna」を届けていきたいと決意を語りました。
OBプレゼン後は再びディスカッションタイム。
午前中に発散させたアイデアを今度は収束させる議論を展開しました。
そこで得たアドバイスや情報をもとに、プレゼン資料の作成などの個別作業を行りました。
夕食後は最後のOBプレゼンが行われた。
1番目は2014年度の未踏スーパクリエータで、慶應義塾高等学校3年生の岡田侑弥さん。
テーマは「プログラミング環境と話と未踏の話」。
未踏の採択テーマとなったビジュアルプログラミングが生まれた背景や歴史、自然言語などの説明とそれらに対する持論を展開しました。
さらに中学生くらいで未踏になるといいこととして、普通の中学生には体験できないことができること、早いうちに人脈を作ることのメリットなどを語りました。
続いては、2011年度未踏スーパークリエータで今回の未踏ジュニアキャンプの運営委員も務める鵜飼佑さん。
現在はマイクロソフトのOffice Development Teamのプログラムマネージャーとして活躍しています。
鵜飼さんが伝えたかったのは大きく以下の4つです。
- ・人に頼んでみるべき/人の頼みを断るべき
- ・言語習得ははやめにやっておこう
- ・周りの人の意見は、周りの人の意見
- ・自分がやらなきゃ他の人がやらないことをやろう
3番目のプレゼンは、2007年度未踏ユースOBで、現在はアクセンチュアで大手企業のイノベーション促進を提案し、技術の翻訳家として活躍する久池井淳さん。 プレゼンテーマは「若いみんなが意識して続けてほしいこと」。 久池井さんいわく、自分はプログラミンスキルもそれほどなく、学生時代の偏差値も高くなかったが、テクノロジーとビジネスをかけ合わせた事業化を考えることが得意だったのだという。 その得意スキルを活かしてビジネスコンテストでは賞を獲りまくり、イチバンを獲ることで次のイチバンを獲るステージを上ったのだと熱弁を奮いました。 現在もビジネスとテクノロジーをかけ合わせた総合スキルでは社内でイチバンの評価を得ている久池井さんが、ジュニアクリエイターたちに伝えたのは、「どこか小さい領域で自分がイチバンになれるところを探そう。 そして、まわりのイチバンの人からその人のイチバンのコツを学ぼう」ということでした。
そしてOBプレゼンのラストを飾ったのは、2009年度の未踏スーパークリエイタ、未踏理事など、数えきれないほどの肩書きと受賞歴を持つメディアアーティスト落合陽一氏。 「近代はタイムマネジメントが重要視されてきたが、現代はストレスマネジメントのほうが重要である」と語り出しました。 ワーク・ライフバランスという概念が注目されているが、落合氏は「良いライフが良いワークを生み出し、良いワークがあってこそ良いライフが得られる」と、その相乗効果を訴え、ワークアズライフという表現が正しいとワーク・ライフバランスの概念をぶった切ります。 学校ではみんな同じ教育や行動を強いられることが多いが、そんな均一な角砂糖になるようなことはしなくていいという落合氏。 なぜならコンピュータにもできることを人間がやる必要は現代ではないから。 さらに、「BI or VC(ベーシックインカム or ベンチャーキャピタル)」と称し、これからの世界はベーシックに健康に生きてるだけでお金がもらえる人と、アイデアや自身の能力・努力ですごくお金が稼げる人に二極化すると予言。 昔は生産性が低かったから、角砂糖でも十分だったが、これからは自分の持っているプロダクトでとがることが必要だと説きました。 自身も得意分野である仕事だけをこなしていたら、周りも落合氏が苦手だと思う単純作業などの仕事は頼まなくなってきたそうです。 最後に、ジュニアクリエーターにも得意なスキルをもっと尖らせていってほしいと激励のメッセージを贈り、プレゼンを締めました。
この後の時間はプレゼン資料の作成やプレゼンの練習など、個別作業に充てられました。
[3日目]
最終日となる4月2日は、日本マイクロソフトに会場を移し、クリエータそれぞれの家族も招いてプレゼンテーションを行いました。 11:00からは最後の招待講演。未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーであり、セキュリティキャンプ講師(IoTトラック)、大手広告代理店の専門役員、高知工業高等専門学校 客員准教授などを務める竹迫良範氏が「機械学習の学習」と題したプレゼンを行いました。 PMを務める2016年度採択プロジェクトの紹介を行った後、中学生から大学生にかけて、PCやプログラムとどのように関わってきたのか、大学時代に日本語全文検索エンジンのOSS開発に参加したことなど、自身のキャリアを紹介。 さらに自作したマインスイーパを自動で解くプログラムの解説をしました。 Kinectの動作原理や、機械学習において必要な教師あり学習や決定木、マーカーレスなどについてクイズも織り交ぜながら解説。 さらに機械学習でよく使われるPythonやRなどのプログラミング言語などについても、自身の活動を交えながらトレンドを紹介。 さらに年代の動機や能力によって変化する、幸せな仕事のやり方やキャリアの重ね方などについてもアドバイスしました。 1時間の休憩を兼ねた昼食後、今回のジュニアキャンプの運営委員の紹介、IPA神島氏からIPA未踏事業についての説明、未踏ジュニアキャンプの目的などの説明が改めて行われました。
さらに、鵜飼氏から今回のキャンプの振り返りを写真と動画を紹介。 2泊3日のメニューを通じて、参加したジュニアクリエイターたちの成長が著しかったことなどを伝えました。 そしてこれから行うプレゼンテーションでは以下のことを語ってほしい、メンターとともに開発を進めることで新たなイノベーションを生み出してほしい、とメッセージを贈りました。
- ・本当に創りたいものがなんなのか
- ・どうやって創ればできそうなの
- ・どんなところが難しそうなのか
プレゼンの内容はNDAのためここで紹介できませんが、熱意溢れる素晴らしいプレゼンでした。 クリエータたちの成長を目の当たりにしたメンターたちの感動もひとしおで、感動に目を潤ませるメンターもいました。
全員の発表が終わった後は、今回のスーパーバイザーを務めた竹内理事から講評と、堂々たるプレゼンを行ったクリエイターたちに賛辞と感想が語られました。
続いては、終了証の授与が全員に行われました。 そして全員で記念撮影タイム。 グループごとの交流会も短い時間ではあったが、それぞれ今回のキャンプを振り返りながら語り合っていました。 今後もこうしたジュニア世代の挑戦の場を増やしていきたいと、最後に鵜飼さんが語り、キャンプは全工程を終了しました。
■5 理事会・未踏会議・未踏ナイト
今年も未踏の日(3/10)に、未踏社団の理事会・未踏会議・未踏ナイトを開催しました。
今回の理事会では村上泰一郎さんのエグゼクティブアドバイザ就任が情報共有されました。
竹内先生による解説:
村上泰一郎氏は未踏社団が2015年度に経済産業省から業務委託された事業のうち「スタートアップ加速のための支援モデルの調査分析」について,当時所属されていたアクセンチュア株式会社で日本のベンチャー環境を盛り立てる方策をまとめていただきました.
このたび,フリーの立場で若い人たちのベンチャーマインドを鼓舞する仕事をなさることになりました.
その慧眼と行動力をぜひ未踏社団の事業展開に注いでいただくために,エグゼクティブアドバイザへのご就任を依頼し,ご快諾いただきました.
村上さんから一言:
大企業向けコンサルティングやベンチャーと大企業の橋渡しを行ってきた経験を活かし、未踏卒業生の皆様の力をより社会に出していくお手伝いができればと思っております。
宜しくお願い致します。
[未踏会議]
未踏人材の産業界等でのさらなる活躍に向け、3月10日(木)(みとうの日)に「未踏会議2017」を開催した。
これから日本がさらに飛躍するために、先進的なIT事業に取り組む事業者や、彼らを活用する立場にある企業はどのような指針や制度を持つべきか。
日本で未踏人材が産業界でさらなる活躍をするための提言がパネルディスカッション形式で語られた。
オープニングの挨拶は、未踏統括PMの慶應義塾大学特別招聘教授・夏野剛氏が務めた。
「未踏クリエイタの報告に世の中にインパクトのあるが出てきた。
この勢いに乗って未踏は人材の流動性を高めていく貢献をしていきたい。
組織の歯車の中で生きていく以外の選択肢を示すよう、若者たちにチャンスを与えていくプラットフォームを作っていきたい」と力強く開会宣言を行った。
続いて、経済産業省大臣政務官の中川俊直氏に「IoTやビッグデータ、人工知能、革新的なIT技術が生み出され、世界はいよいよ第四次産業革命に向かおうとしている。
その熾烈な国際競争の主役は才能あふれる未踏人材。
2050年に日本が世界最強の国だと言われるように、政府は支援する」と、激励のメッセージをいただいた。
そして、メインプログラムである未踏人材によるショートプレゼンテーションとパネルディスカッション。
夏野PMをモデレータに、6人の未踏卒業生が登壇した。
トップバッターでショートプレゼンテーションを行ったのは、スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEO 鈴木健氏(未踏事業2002年度修了)。
未踏でのテーマである新しい貨幣システム「PICSY」の開発についてと、スマートニュースでの事業展開について語った。
続いて、株式会社Gunosy 代表取締役最高経営責任者(CEO)福島良典氏(未踏事業2012年度修了)が登壇し、未踏のテーマとして開発したレコメンドエンジンで立ち上げた情報キュレーションサービス「グノシー」、無料ニュース配信アプリ「ニュースパス」や、現在模索している新規事業について語った。
モデレータを務めた夏野氏は鈴木氏と福島氏は起業家として、後の4人は大企業で成功しよう思っている人の代表として6人に討論してほしいと、一つ目のテーマである「日本からAppleやGoogleは生まれるか?」を投げかけた。
6人はそれぞれ事業展開やモノづくりに対する展望や課題について語り合った。
後半のショートプレゼンテーションは、マイクロソフトデベロップメント株式会社 オフィス開発統括開発部 鵜飼佑氏(未踏事業2011年度修了)からスタート。
未踏では伴泳ロボットを用いた水泳支援システムを開発。現在はマイクロソフトで「Office Lens」「Minecraft: Education Edition」で「Minecraftデザイナー」などを開発している。
未踏でのテーマである、髪の毛で音を感じる新しいユーザーインタフェース「Ontenna」の開発を、現在では企業のプロジェクトとして取り組む富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター Ontennaプロジェクトプロジェクトリーダー 本多達也氏(未踏事業2014年度修了)。
Ontennaをより多くのろう者に届けるべく日々励んでいる。
未踏では「Cat@Logというシステム」を開発し、現在は月面資源開発の事業化に取り組む民間宇宙企業でクリエイティブディレクターとして活躍している株式会社ispace Creative Director 米澤香子氏(未踏事業2008年度修了)。
操縦体験アプリの制作なども行っている。
ショートプレゼンのラストを飾ったのは、未踏ではecoMaki webマンガ制作ツールを開発し、ファナック、フリーランスを経て、昨年、未踏のマッチングプログラムによりPFNに入社した株式会社Preferred Networks エンジニア 米辻泰山氏(未踏事業2012年度修了)。
現在は個人的にディープラーニングを活用した自動着色サービス「PaintsChainer」が話題を呼んでいる。
パネルディスカッション次のテーマは、「日本に未来はあるのか」。
未踏人材が目指しているのは、かつてないものを世の中に出していくこと。
それが日本からなかなか出ないのはなぜかと問いかける夏野氏に対し、日本の村社会的なクローズドな風潮を指摘された。
だが、未踏リーダーたちは、未来は自分たちが創っていくと、心強い意志を表明した。
会場からの質問タイムには、未踏社団理事・落合陽一氏から「競争は好きですか?」という質問が投げかけられると、未踏リーダーたちからは、「競争がないとイノベーションは起きない」「競争は自分との勝負」「競争よりも共創を大事にしたい」といった前向きな答えが返ってきていた。
最後のテーマは、未踏リーダーたちから「社会への提言」。
6人の回答は以下の通りである。
- 米辻:「遊びと義務と勉強をすべてイコールでつなげること」
- 米澤:「外に出よう」
- 本多:「『できる』理由を考える」
- 鵜飼:「エンジニアをヒーローに。1億総クリエイターに」
- 福島:「ユーザーを上司に」
- 鈴木:「留学義務化と義務教育者化」
IPA理事長の冨田達夫氏は、ベンチャーを応援しようとする環境作り、未踏人材が羽ばたけるようなエコシステムを作っていきたいと宣言。未踏会議2017を締めくくった。 この「未踏会議 2017」の様子はニコニコ生放送公式チャンネルでライブ放映が行われ、15,449人もの視聴者の関心を集めた。
[未踏ナイト]
未踏会議2017に引き続き、19:00からは「未踏ナイト2017」が開始され、未踏クリエータ(現役・OB/OG)、未踏プロジェクトマネージャ(現役・OB/OG)、IPA・経産省関係者が多数参加した。
開会宣言を務めたのは未踏会議2017に続き、未踏事業統括PMの慶應義塾大学特別招聘教授・夏野剛氏。 日本に足りないのはお金でも人材でも技術でもなく、未踏なことにチャレンジする勇気だけと、その勇気を持ち合わせる未踏人材への期待を語った。
オープニングにはスペシャルゲストとして、経済産業大臣の世耕弘成氏が登壇。 ベンチャー企業の活性化に課題を感じているという世耕大臣は未踏プロジェクトに期待を寄せているという。 「経済産業省として単に応援するだけでなく、共に連携をしながら、刺激を与えながら頑張っていきたい」と熱い激励のメッセージをいただいた。
続いては、未踏OBによる8人の招待プレゼンテーションが行われた。 トップバッターは慶應義塾大学大学院1年で手話通訳士の資格を持つ和田夏実氏。手話を第一言語に育ち、感覚代行や身体拡張を通じてコミュニケーションを研究し、それに応じた表現ツールを開発している。
2番目は立命館大学のメディアセンシング研究室 片岡秀公氏。 農作物の鮮度を音で計測するシステム「VEGFR」を開発している。スマートフォンなどの身近なデバイスでその反射音や透過音を採取し、機械学習を用いて鮮度の識別を行うというものだ。
3番目は早稲田大学大学院 森島研究室の古川翔一氏が開発する「Mouth Motion Generator」。 音声から簡単にキャラクターの口パクシーンを作れるというもの。 今後は実写版も含め、映像業界にインパクトを与えていきたいと語った。
4番目は東京理科大学の石井 翔/秋澤 一史/大谷 拓海/城山 賢人チーム。 Web開発のためのWebGLフレームワーク"Grimoire.js"を開発している。 単純なロジックでも記述が煩雑になってしまうWebGLをWebエンジニアにとって使いやすいように、今までのコードに近いかたちにしてくれるフレームワークだ。 これからもさまざまな拡張性を持つフレームワークとして進化させていきたいとのこと。
5番目のアスラテック株式会社 取締役 チーフロボットクリエータの吉崎航氏がプレゼンしたのは、人型ロボットのための汎用制御ソフト V-Sido(ブシドー)。 小さな玩具ロボットから巨大ロボットまでさまざまな形状、大きさのアクチュエータに対応することができ、現在では企業にソフトを提供している。 巨大ロボットの購入が受け入れられる社会をつくるため、ロボット革命実現会議などにも積極的に参加しているという。
6番目の株式会社Preferred Networks(PFN) エンジニアの米辻泰山氏は、画像を入れると着色できる線画着色Webサービス「PaintsChainer」を紹介。 PFNが提供するChainerを使って気軽に開発したものだったが、反響がとても大きく、1カ月で世界100万人以上のユーザーが利用したそうである。
7番目に登壇したのは、髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェース「Ontenna」を世界中のろう者へ届けるために開発プロジェクトを進めている富士通株式会社グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター UIデザイナーの本多達也氏。 次世代モデルを富士通フォーラム2017で発表することも明かし、会場を沸かせた。
ラスト8番目は株式会社ズカンドットコム 取締役 CTOの直江憲一氏。直江氏は膨大な未踏人材のデータベースをWeb上で公開する「未踏図鑑」の開発に取り組んでいる。 一般ユーザーの質問に公式ボットが反応するような仕組みも搭載するという。 完成に期待したい。
ここからはお酒とケータリング料理をいただきながらの歓談タイム。 乾杯は一般社団法人未踏・代表理事の竹内郁雄統括PMが音頭をとった。 懇親会は2階に会場を移し、未踏クリエータ(現役・OB/OG)、未踏プロジェクトマネージャ(現役・OB/OG)、IPA・経産省関係者たちが交流し、情報や意見交換を行った。 懇親会場では、以下の9人がショートプレゼン(LT)が行った。 発表テーマは以下の通り。
- ・未踏塾の取り組み:小出 洋
- ・未踏ジュニア: U-18向けミニ未踏プロジェクト:鵜飼 佑(一般社団法人未踏 プログラミング教育WGチーフ)
- ・Mitou Foundation × CoderDojo Japan の新しい取り組み:安川 要平(一般社団法人 CoderDojo Japan 代表理事)
- ・EmbodyMeのご紹介:吉田 一星(Paneo株式会社 CEO)
- ・United Mesh Neteork:神野 響一(ソナス株式会社/東京大学先端科学技術センター)
- ・メタマテリアルの微分幾何:大嶋 泰介(東京大学 博士課程 / 日本学術振興会特別研究員)
- ・SmartNews US 版の開発:西岡 悠平(スマートニュース株式会社 / プロダクト担当ディレクター)
- ・OpenSurgery:中野 哲平(慶應義塾大学医学部)
- ・IoT研究会とIoT開発合宿のご紹介:上田 真史(一般社団法人未踏 IoT研究会 主宰)
イベント終盤の21:30からは、1階会場にテーマごとの議論エリアが用意され、ロボット・IoT・シビックテック・プログラミング教育・起業/事業家・機械学習/人口知能(AI)など、それぞれ興味のあるテーブルに集まり、交流が行われた。 会場には1枚スライドショーも投影された。
最後は竹内理事の挨拶でクロージング。 今回の未踏会議・ナイトはこれで終了した。
[ MITOU MAGAZINE ]
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発行元:一般社団法人未踏 http://www.mitou.org/
今回の担当:事務局・西尾